おくびがすわる前のお子様へ:院長ブログ
6月25日(土曜日)は、臨時休診になりご迷惑をおかけしました。 第18回Craniosynostosis研究会に出席してきました。
craniosynostosis(頭蓋縫合早期癒合症)に関心のある、主に脳神経外科学および形成外科学を専門とする医師や研究者がその知見を基に意見交換し、病因の解明、診断・治療成績の向上を目指す場で、年に一度、熱い議論が交わされます。乳児の頭蓋骨のかたちに関するプロ中のプロたちです。
院長も11年前から毎年参加し演題を提供して、常に知識をアップデートしています。
今回は、ヘルメット治療が急速に拡大している現状に、多くの先生方から危機感を覚えると言う声が上がりました。頭蓋縫合早期癒合症である患者様が、適切な診断が下されず、誤診されたままヘルメット治療に移行してしまうといった危機感です。
ご両親が乳児の頭のかたちの扁平化に気が付くのは、生後2~3か月のときが多いです。
原因は向き癖のことが多いのですが、頭蓋骨の一部が扁平化する病気(=頭蓋縫合早期癒合症)も同じころから発症するため、初期には見分けが難しいです。両者を同時に発症していることもあります。
お母さんたちにお願いしたいこと
頭蓋縫合早期癒合症は、元気に成長しているお子さんにも起きる原因不明の病気です*。
手術が必要な病気です。出生後2~3か月など早く診断されると、低侵襲の手術で済みます。
単に向き癖があるだけ、その変形は病気ではない、と断言することは危険です。
ヘルメット治療かどうかを悩む前に、形が気になったら、まずは病気かどうかを調べる必要があります。頭蓋縫合早期癒合症の診断や治療の経験のある小児形成外科医か、小児脳神経外科医の診察を受けることをお勧めします。
ヘルメット治療を始める前にも、必ず小児脳神経外科医や小児形成外科医などの専門家による診察を受けることをお勧めします。
*単一縫合早期癒合症の場合です。遺伝性の症候群に起きる複数の頭蓋骨縫合癒合の場合は、心臓や四肢の特有の病気の特徴を併せ持っていることがあります。
この現状を危惧し、当院では、生後2~3か月(首がすわる前)のお子さんの初診と超音波検査を、健康保険で行うことにいたしました。
ご両親が思い立ったらその機を逃さず、概ね2週間以内に受診できることを目標にいたします。当院では、他院からの紹介状は不要です。
また、精密検査が必要な場合は、地域連携を利用して高度医療機関に紹介状をお書きします。
(過去に紹介歴のある病院;成育医療研究センター、東京都立小児医療センター、慶應大学病院、神奈川県立こども医療センター、千葉県立こども病院、千葉大学、埼玉県立小児医療センター、高槻病院、国際医療福祉大学成田病院、帝京大学、東京慈恵会医科大学など)
保険診療の場合はヘルメット治療(自費診療)の説明、適応診断は一切行いません。
なお、ヘルメット治療をお考えで、その説明を詳しくお聞きになりたい方は、これまでどおり自費診療で診察を行いますので、あらかじめ予約時にお申し出ください。
エコー(超音波)検査について
超音波検査は赤ちゃんに負担をかけない安全な検査です。
- 検査でわかること
縫合線が癒合していないかどうかのスクリーニング - 検査が比較的容易な赤ちゃん
定頚前(おくびがすわっていない)赤ちゃん
髪の毛が少ない赤ちゃん
頭部に平坦な部分がある赤ちゃん - 検査が不正確になりやすい赤ちゃん
定頚後(おくびがすわっている)赤ちゃん→検査中に大きく首を動かしてしまう
髪の毛が多い赤ちゃん→ゼリーでベトベトになり、検査しにくい - 検査のメリット
頭部レントゲンを行わなくても、病的な変形の有無を確認できる
被曝の心配がまったくないため、経過を追って何回でも検査できる - 検査の弱点
頭部レントゲンに比べると、部分的な評価しかできない
縫合線の開存以外の、病的な所見の評価が難しい
〔検査結果によっては頭部レントゲンやCTをお勧めすることがある(こども病院などへの紹介)〕
ゼリーを使用するため、頭髪や洋服が汚れてしまうことがある
*検査後に可能なかぎり拭き取りますが、あしからずご了解ください) - 診察と検査の流れ
(1)妊娠、出産、出生後の状況を問診する。
(2)視診、触診で変形の特徴、運動発達、姿勢を丁寧に評価する
(3)エコー(超音波)検査を行う
①検査台から落下しないようにからだをタオルでくるみます
②頭の平坦な部分に検査用ゼリーを塗ります
③プローベ(エコー検査の端子部分)を当てます
④頭蓋縫合の癒合状態を確認します
⑤検査結果の説明をその場で行います - 所要時間
診察、検査、結果説明も含めて約30~45分