お姉ちゃんが来てくれた -院長ブログ

当院も開業してから3年が経ちました。赤ちゃんのあたまのかたち専門クリニックなんて少子化時代に何考えてるんだ?と言われながらもなんとかやってこられたのも、頭の形がきれいになって卒業証書をお渡しするときのご家族の笑顔があるからです。

そんなある日、赤ちゃんの付き添いで当院に来てくれたお姉ちゃん。お姉ちゃんは赤ちゃんの時に斜頭があって、開院したばかりの頃に受診してくれた子でした。

来院当時、後頭部に左右差があり、計測してみると(頭部を上から見た対角線の左右差が)10ミリ、ちょっと後頭部の扁平が目立つかな?という形でした。計測値で言えば中等度の斜頭なので、ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメットの添付文書によれば、ヘルメット治療を適応しても良いという値です。

(どのような形が治療対象なのかは、ヘルメット・メーカー各社が公表している添付文書を確認してください。)

頭蓋形状矯正ヘルメットは医療機器ですので、自由診療だからといって、あるいはご両親が希望されたからといって、自由にかぶって良いというものではありません。見た目を恰好よくしてあげたいからと、解剖や発達を無視して思い通りの形や大きさにすることは難しいです。そのご希望が医師としての経験上無理だと判断した場合には、治療をお断りすることもあります。

お姉ちゃんを診察したとき私は「ヘルメット治療は不要!」と判断しました。頭の形のゆがみはヘルメット治療適応範囲ではあったものの、定点の計測数値では評価できない形の特徴や、妊娠出産・産まれてからの発達の状況、寝ている時の姿勢を診察し、この子はヘルメットをしなくても成長に伴う自然改善が期待できると判断したからです。

その後は再診が無かったので、本当にその判断が正しかったのか? ご両親の判断がどのような方向だとしても治療可能な時期はその子にとって一度しかないので、不利益を与えてしまう情報を提供していなかったか? 内心は本当に心配していました。

さてお姉ちゃんのあたまの形は?
左右差の計測値は3ミリで正常値になっていました!
形の特徴もずいぶん改善して綺麗な頭の形になっていて、お母さまも気にならなくなったということでした。

よかった!

私は年間1,000人以上の赤ちゃんの頭の形を診ていますが、初診はいつもとても緊張します。ヘルメットを装着させた方が良いか、自然に治ると説明すべきか、経過を見ていきながら判断するのがベストです。

ただ、ヘルメット療法開始適齢期が限界に近づく生後6ヶ月近くなって、経過を見ることなく、初診一回きりの診察で、「この子はどうしたらよいでしょう?」とお聞きになるご両親もおられます。

この状態では的確な診断予測を立てるのはとても難しくなりますので、できれば早期にご来院いただき、その時に適切なそして可能な治療の選択肢を選んでもらって、「いついつまでに、このくらいだったらこうしましょう。」という時間経過を加味した判断を繰り返しての6ヶ月の再診であれば、より正確な未来予測をしやすくなります。

また、その判断の通りにいったのか、思うようにはならなかったのか、成長後にも診ることができる機会があれば、フィードバックできてその予測はもっと精確になるとは思いますが、残念ながらそれはかなり難しいです。
だって、斜頭症も短頭症も病気ではないので、頭の形がきれいになった場合も、そうでなかった場合も、なかなか当院に足を運んでくれる機会がないのですから。

そんな中、とてもきれいな頭の形になって遊びにきてくれたお姉ちゃんに感謝です!