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こんにちは。
赤ちゃんのあたまのかたちクリニック院長の高松です。
近年、「子どもの見た目を整える」医療がさまざまな形で広がり話題になっています。
小学生の二重まぶた手術、歯列矯正、低身長の治療、医療脱毛、あざの治療、そして赤ちゃんの頭の形を整えるヘルメット治療など——。
どこまでが医療で、どこからが“ルッキズム(外見至上主義)”なのか、その線引きはとても難しい問題です。
「目を大きくしたい」という希望の背景には、単なる好みだけでなく、
先天的な眼瞼下垂や筋緊張の弱さ、さらには染色体異常や視覚発達の問題が隠れていることがあります。
私たち形成外科医にとって、「眠そうな目」「小さい目」という訴えは、
まず視覚やまぶたの筋の機能評価を行うべき医学的サイン”です。
頭蓋骨の縫合早期癒合症や、変形性斜頭に伴って起きるサインであることもあります。
それを見落としたまま「美容整形で解決しましょう」と進むと、
本来必要な治療やサポートの機会を奪ってしまう可能性があります。
目が小さい、と同じように頭の形が気になることも、まずは病的な原因があるかもしれないという心配を解消することが、診察の第一歩です。
これが実は案外難しく、解剖的な知識が薄かったり、経験が浅い医師では見落とすことがあります。十分に臨床経験を積んだ医師であっても、細心の注意を払って診察することが必要です。
病気がなさそうだ、と診断できたところで、形がどうなのかという議論にすすむことができます。
「ぜっぺきは遺伝だ」「ぜっぺきは日本の文化だ」
今となってはかなりの暴言だと思いますが、14年前に国立成育医療センターで赤ちゃんのあたまの形外来を開始したいと申請をした時に、倫理委員会の委員の方から実際に言われたことばです。
ある程度の人種的な特徴や、伝統的な育児方法が民族によって異なることは前提としてあるとしても、科学的な立場からは疑問を持たざるをえません。
社会的価値観を押し付けて乳児の頭の形を決めてしまうことは
古代のインカ帝国や、アフリカの民族で過去に行われていた人工頭蓋変形と
どこが異なるのでしょうか。
二重まぶたや高い鼻梁といった「西洋的な顔立ち」が美しいとされる風潮には、
本来アジア人の持つ特徴を「劣っている」とみなす誤った価値観が潜んでいます。
こうした見方は、人種的・文化的な多様性を損ないかねません。
しかし一方で、世界の人々と交流が当たり前になった社会を生きる中で——
海外留学や出張の際にアジア人の外見に対する差別や偏見に直面し、
その経験から深い無力感を抱いた方も少なくありません。
社会的構造の中にいると、差別する側にいるものは無意識に、もしくは悪意など全くなく
「そのことは見えていることだから言ってもかまわない」「冗談のつもりだった」
と他人の外見の特徴を口にすることがあります。
ことばが刺さった側を経験してみると、その言葉がいかに深く自尊心を損なうか、
気が付くでしょう。
「自分の見た目を少しでも肯定的にしたい」「自信を取り戻したい」
——そんな思いは、単なる虚栄ではなく、
痛みと努力を経て前を向こうとする人間的な葛藤です。
私は医師として、そのような心情を否定しません。
むしろ、どのような背景であれ、
「自分を好きになりたい」という思いの根底には、尊重すべき誠実さがあると感じています。
ヘルメット治療を行っていると、時に「赤ちゃんがかわいそう」「親のエゴではないか」といった声を耳にします。
そのたびに、私は丁寧に説明するようにしています。
ヘルメット治療は低侵襲で、装着さえしてくれれば悪化するリスクがほぼ無い医療です。
副作用とされる接触性皮膚炎も、製品の改良で軽微にとどまるようになりました。
むしろ、重度の変形を放置した場合に自然に改善することは少なく、
成長とともに頭蓋骨が固まれば、後から取り返すことはできません。
小児形成外科の領域の他の疾患の治療では、本人が意思表示をできる思春期まで待ちましょうと提案することも多いのですが、赤ちゃんの頭蓋骨については、柔らかく、頭囲が急速に成長している生後4〜12か月頃の限られた時期にしか、安全かつ効果的に形を整えることができません。
技術的なことを申し上げれば成人後の頭蓋骨の形を変更することも可能です。それは、頭蓋骨を骨切りして組み直したり、人工物(人工骨やシリコンなど)を挿入するような安全面のリスクを伴うような手術であり、美容目的で行われるヘルメット治療の数倍の金額で行われる自費診療です。
つまり、矯正は「今しかできない医療」なのです。
赤ちゃん自身が治療を望むことはできません。
親が代わりに最善を選ぶ責任があります。
それは決して「見た目を良くしたい」という虚飾ではなく、
成長期にしかできない医療的介入を見極め、未来の可能性を守る行為です。
方法は、必ずしもヘルメット治療一択ではないかもしれません。いくつもの選択肢のなかから
効果の確率と安全性を理解して優劣を検証することは難しく、迷うことも多いでしょう。
私は、親御さんのその決断を「勇気ある選択」として尊重しています。
医療には二つの方向があります。
■整える医療(Reconstructive Medicine)
発達や機能の偏りを調整し、自然な成長を支える。
→ 頭蓋矯正や理学療法はこの領域にあります。
■作りかえる医療(Cosmetic Medicine)
社会的・文化的価値観に沿って見た目を変更する。
→ 二重手術や審美的施術の多くはこちらにあたります。
どちらも「形を変える」行為であることに違いはありません。
しかし、目的が「発達の最適化を支えること」か「社会の理想に合わせること」かによって、
医療の意味はまったく異なります。
ルッキズムは、時に“美しさ”という名の下に、社会の価値観を子どもに押しつけてしまう力を持っています。
けれど本来の医療は、社会に合わせて形を変えることではなく、
その子が本来もつ成長力を引き出すことのはずです。
赤ちゃんの頭の形を整える医療も、
「見た目の均一化」ではなく、「発達の最適化」を目指す医療でありたい。
それが、私の願いです。
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火曜日は理学療法士による発達支援を含む初診ですので、費用がことなります。詳細は治療費のページをご覧ください。