赤ちゃんの頭の形について、「軽症と言われたけれど、どうしても気になる」とご相談いただくことがあります。
今回ご紹介するのは、まさにそういったご家族のお話です。

ある病院で３Dスキャンによる評価を受けた際には「軽症」とされ、「経過観察で大丈夫」と説明されたとのこと。しかし、お母さんはその結果に納得できず、当院を受診されました。

実は…計測時の「赤ちゃんの向き」がカギになります

その病院で撮影されたスキャン画像を確認すると、赤ちゃんは（頭を真上から見た画像において）明らかに左斜め上を向いた姿勢で撮影されていました。そのため、画像を真上から見ると後頭部は左右対称に見え、「歪みがない＝軽症」と判断されたようです。

ところが当院で、お顔（おめめやお鼻）を真上に向けた状態で再スキャンを行ったところ、明らかな左右差があり、中等度の斜頭症と診断しました。

「吸引分娩の跡で治療が必要」と言われたけれど…

さらに別の医療機関では、後頭部の凹みについて「吸引分娩の際にできた凹みで、治療が必要な状態」と説明されたそうです。

しかし当院では、その凹み自体は乳児の頭蓋骨に特徴的な生理的な陥没であることが、触診で容易に診断できました。
結果としてこのお子さんは中等度の斜頭症であり、ヘルメット適用も選択肢となる左右差が見られたケースでした。
ただし、特に手術が必要な病的な所見はなかったため、ヘルメット療法を行うか否かはご両親のお考えに委ねることとなります。

当院では、ヘルメット治療ありきではなく、ご家族の希望と赤ちゃんの発達状況に応じた多角的なご提案を行っており、基本的にはヘルメット療法への誘導は行なわない方針ですので、ご両親からすると少しもどかしく感じられるかもしれませんが、現状の正確な把握や進行防止策の提示など、選択肢の幅を持たせた説明を心がけています。

赤ちゃんの頭の形は「お顔の正面」だけ合わせれば簡単に評価できる？

今回のケースでは、（頭を真上から見た画像において）おめめやお鼻をまっすぐ上に向けるだけで斜頭が明らかになりましたが、実際の赤ちゃんの頭の形は千差万別です。

• 耳の位置が左右でずれている
• 目の位置や高さが異なる
• 鼻がわずかに曲がっている
• お顔の左右差が大きい
• 後頭部の一番出っ張った位置が中心からずれている
• 頭頂部の高さが左右で違う

このような微細な左右差や非対称の所見が複数みられることもあり、単純に顔を「真上」に向けただけでは、正しい中心を捉えた評価にならないこともあります。
私が指導している医師の先生方に対しても、「これは正中がずれています。」、「これではこの赤ちゃんの頭の歪みはデータに出ませんよ。」とアドバイスさせていただくこともしばしばあります。
計測はそのくらい難しい作業なのです。

医師の目と手で、正しい評価を

そのため当院では、スキャンや計測を行う際にも、医師による細やかな観察と姿勢誘導を組み合わせ、機械計測と手計測の両面から評価しています。
場合によっては、機械計測の数値と実際の見た目にずれが生じることもあるため、最終的な判断は医師の確認と多角的評価によって行うことが重要です。

正しい評価が、正しい選択につながる

赤ちゃんの頭の形は、ちょっとした姿勢の違いやスキャンの角度で、大きく見え方が変わってしまいます。
だからこそ、「他院で問題ないと言われたけれど、やっぱり気になる」というご家族の感覚は、決して軽視すべきではありません。

• 「正しい姿勢での評価がされているか？」
• 「見た目の違和感と数値の整合性はあるか？」
• 「説明は自分たちにとって納得のいくものであったか？」

そういった視点で、一度立ち止まって再評価を受けることが、お子さんにとって最適なタイミングや治療選択につながる場合があります。

当院では、評価・説明・選択肢の提示のそれぞれの段階を丁寧に行い、ご家族とともに歩んでいくことを大切にしています。