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頭の形外来
Crania Deformity Blog

早い受診と2ヘルメット

定頸前から増えてきた「早期受診」──ヘルメット治療の新しいかたち

こんにちは。赤ちゃんのあたまのかたちクリニック院長の高松亜子です。
近年、「ヘルメット治療は早いほうがよい」という認識が広まり、定頸(首がすわる前)に受診される赤ちゃんも増えてきました。
多くの保護者の方は、生後1〜2か月ごろに頭のゆがみに気づき、「だんだん悪化してきたように感じる」とご相談に来られます。

定頸前の受診が増える背景

保護者の方々の意識が高まり、早めに受診してくださること自体はとても良い傾向です。

万が一、頭蓋縫合早期癒合症が原因で変形している場合に触診やエコー検査やレントゲン検査で早期発見しやすく、例えば手術的治療が必要になったとしても負担の小さい手術方法で治せる可能性が高まります。(手術方法は、医療機関によって異なります)

一方で、定頸前(生後3〜4か月頃まで)は、向き癖による頭の形が良くも悪くも変化しやすい時期でもあります。
このため、一般的にはヘルメット治療を始めるにはやや早いと考えられています。

定頸前にヘルメットを装着すると、首や体幹に負担がかかりやすく、慎重な判断が必要になります。
また、この時期は変形性斜頭症(Deformational Plagiocephaly: DP)が進行しやすく、後頭部だけではなく二次的変形(耳の位置、目の大きさや顔の骨の形、瘤のような盛り上がり)を起こしやすいというリスクもあります。

重度変形と発達の関係

なかには、定頸前の時点ですでに重度の変形を示す赤ちゃんもいます。
こうした場合、「収まり癖」(扁平になった後頭部にちょうど“はまり込む”ように同じ向きで寝てしまい、反対を向かせてもすぐ元の向きに戻ってしまう状態)がついてしまい、首の動きが偏ることで定頸そのものが遅れることがあります。
定頸が遅れると、ヘルメット治療を始めるタイミングも遅くなり、十分な矯正効果を得にくくなる悪循環になる場合もあります。

つまり、

  • 変形が進行してしまう
  • 定頸や運動発達が遅れる
  • ヘルメット開始が遅れて治療効果が限定される

という悪循環に陥る可能性があるのです。
保護者の方が「このまま悪化してしまうのでは」と不安を抱えながら過ごす時期が長くなることも、大きな負担になります。

■ 対応策①:理学療法士による発達サポート

こうしたケースでは、まず体の使い方の偏り筋緊張のアンバランスを整えることが重要です。
実際、定頸前の赤ちゃんで強い向き癖がある場合、多くは「重力にさからって姿勢を保つことが苦手」「体が柔らかすぎる」「左右の動きのバランスが悪い」といった特性を持っています。反り返ってしまう、というお悩みもよく聞かれます。

このような赤ちゃんには、理学療法士(PT)による発達サポートが非常に有効です。
お子さんそれぞれにあった適切な抱き方・寝かせ方・遊びの工夫を通じて、体の使い方を整えることで、

  • 向き癖の改善
  • 頭の形の進行予防
  • 定頸の促進

といった良い変化が期待できます。
結果として、頭の形の改善効果が得られるケースも少なくありません。

■ 対応策②:定頸前専用ヘルメット「プロモメット・ファースト」

もう一つの選択肢が、定頸前専用に設計されたヘルメット「プロモメット・ファースト」による早期介入です。
通常のヘルメットとは異なり、首への負担を最小限にしながら変形の進行を防ぎます

「プロモメット・ファースト」で早期に予防的治療を行い、定頸や寝返りが始まる適切な時期に通常のヘルメット(プロモメット)へと移行する、いわゆる2段階ヘルメット療法を採用します。

重度変形では、通常のヘルメットが適切に装着できないほど頭部の形が崩れていることがあり、この場合、ファースト段階で形を整えておくことで、本格的なヘルメット治療にスムーズに移行できるようになると期待されています。

注)プロモメット・ファーストは、他院では扱っておらず、当院でだけの提供になります。

■ 対応策③:向き癖が強い場合の併用治療

特に、強い向き癖があり自然な改善が見られないケースでは、

  • 理学療法士による発達サポート
  • 「プロモメット・ファースト」と「プロモメット」の2段階治療

を組み合わせることで、変形の進行を防ぎ、運動発達を支えることが可能です。

さらに、治療経過の中で重要になるのが“ヘルメット療法中の向き癖の残存”です。

ヘルメット治療によりある程度まで形が改善してきた月齢になった際に、強い向き癖が残っていると、ヘルメットを外した後に頭の変形が部分的に戻ってしまう(リバウンド)ケースが見受けられます。
その結果、ヘルメット治療を長期間続けざるを得ない場合もあります。お子さんの月齢が高くなってからでは、自我が出てくるためヘルメットも姿勢改善も嫌がり、脱ぎたいお子さんともっと治って欲しい保護者との間で葛藤が起こり、親子ともに負担を感じてしまうかもしれません。

こうした理由から、
向き癖は「治しやすい月齢のうちに、しっかり改善しておく」ことがとても重要です。
とくに生後早期は、脳とからだの成長スピードが速く、姿勢や体の使い方に働きかけることで良い方向へ変化しやすい時期です。間違ったからだの使い方を固定せずに、良い使い方の経験を赤ちゃんにつんでもらうことで、次の段階の発達の土台になりやすいのです。

そのため、

  • 月齢が小さいうちからPTによる発達サポートを導入する
  • 重度ケースでは早期にプロモメット・ファーストを併用する
    など、赤ちゃんの個性に合わせた早期介入が、長期的にみても負担の少ない治療につながります。
  •  

■ まとめ

赤ちゃんの頭の形は、早い段階で気づいて行動することが何よりも大切です。
しかし「早ければよい」「@@さえしておけば解決」という単純な話ではなく、その時期に応じた最適な方法を選ぶことが重要です。

当院では、医師・理学療法士・義肢装具士が連携し、
赤ちゃん一人ひとりの発達段階に合わせた最適なケアを提案しています。

「早く気づけた」その一歩を、安心と希望につなげられるように。
私たちは、保護者の皆さまと一緒に赤ちゃんの成長を見守っていきます。

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