赤ちゃんのヘルメット治療、急増する医療機関の中で大切にしたいこと

「選べる時代」にこそ、見極める力が求められます

こんにちは。「赤ちゃんのあたまのかたちクリニック」院長です。現在は、ヘルメット治療を受けられる医療機関が増えた「選べる時代」だからこそ、ご家族には“見極める力”が求められています。

そうした背景には、赤ちゃんの頭の形について関心を持たれる保護者の方が増え、ヘルメット治療という選択肢がようやく広く知られるようになってきたことがあります。それに伴って、最近では、全国的にヘルメット治療を行う医療機関が急増しています。

医療機関が増えることは、患者さんにとって良いことです

これは、赤ちゃんとご家族にとって喜ばしい変化です。
これまで遠方の専門施設に長時間かけて通院していたご家族が、より近くの医療機関で治療を受けられるようになることは、負担の軽減につながります。

また、医療機関やサービス提供者が増えることで、価格やサービス内容の透明性も高まり、結果的に治療の質の向上につながると私たちは考えています。

治療が広がり身近になったからこそ、注意も必要です

こうして治療がより広く提供されるようになった今、私たちが気になっているのが、「ヘルメット治療の質のばらつき」が目立ち始めているという点です。

実際に当院や連携する医療機関には、
「他院でヘルメット治療を始めたが、思うように改善せず不安になって相談に来た」
「治療前の説明と全然違う結果だった」
といったご相談が、以前より明らかに増えています。

中には、以下のようなケースもありました：

変形の種類の見極めが不十分で、実はヘルメット治療の適応ではなかった
調整が不適切で、頭囲の成長を妨げかねない設計がそのまま使用されていた
治療中のモニタリングがなく、いつの間にか“かぶっているだけ”の状態になっていた
短頭症の改善を目的とすべき症例に対し、その変形を十分に補正できない設計のヘルメットが使われていた

こうした事例が生じる背景には、急激な需要の高まりに対して、十分な経験や知識を持つ医師や設計担当者がまだ少ないという現実があるのかもしれません。

医療機関選びは、治療の始まり以上に大切です

医療機関を選ぶ際は、「ヘルメットが作れるか」だけでなく、次のような視点での確認をおすすめします。

医師が形成外科と小児の頭蓋・顔面の成長に関する専門知識と診かたの技術を持っているか
定期的な頭部形状の計測と評価が行われているか
装具の設計・調整を行う担当者が医師と連携しながら対応しているか
「治療を始める」だけでなく、「いつやめるか、どう終わらせるか」の説明があるか

当院の取り組み

当院では、すべての赤ちゃんに対して、以下のプロセスを大切にしています。

初診時に頭蓋縫合早期癒合症の鑑別を含めた精密評価を行います
治療計画は頭のかたちだけでなく、発達の状況も加味して立案します
ヘルメットの設計は、複数の専門家によるダブルチェック体制を敷いています
必要に応じて小児科・小児脳神経外科・小児リハビリ専門職との連携を行っています

最後に

ヘルメット治療は、赤ちゃんの未来にポジティブな変化をもたらす素晴らしい選択肢です。
だからこそ、しっかりとした評価・丁寧な経過観察・確かな技術の三拍子が揃ってはじめて、真に意味のある治療になると私たちは考えています。情報があふれるいま、保護者の皆さまには、どうか“選ぶ力”を大切にしていただきたい。
私たち専門家も、その一助となれるよう、日々誠実な診療を重ねてまいります。