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ぜっぺきは一般用語です。断崖絶壁の絶壁で、他人の容姿をからかう時にも使われることがあるので、注意が必要です。短頭は、医学あるいは自然科学の用語です。国際基準に基づく小奇形アトラス形態異常の記載法によると、
“頭長幅指数(cephalic index,)が81%以上である場合(客観的)。または前後径が幅に比較して短い場合(主観的)を指します。”
“Cephalic indexとは頭長に対する頭幅の百分率です。正常値は76~80.9%とされる。頭長は眉間と正中線上で後頭部最も突出している部分の距離である。棒状討(ノギス)により測定する。頭幅は頭頂号の外倒で最も突出した部分の距離である。棒状計により測定する。上記の正常値は白人を対象として掲られた値であり,f也の人種における有用性は限定的である。 また近年,うつぶせ寝が推奨されなくなったことから,頭蓋の形態に変化が生じている可能性があり,現行の標準値の妥当性も不明である。新たな標準値の検討が必要である。短頭は,後頭部の平坦化(Flat occipu()とは異なるが両者は併存することがあり,別々に記載されるべきである。”。[出典1]
1は後頭部の平坦化で、あおむけ寝で生じた頭位性短頭症です。片方に偏っているのは斜頭症です。2-5は1が進行したものです。
ぜっぺき(後頭部の平坦化)イコール短頭症ではありません。後頭部に丸みがあってもcephalic index(頭長幅指数または頭指数ともいいます。以下「Cl」といいます。)の数値により短頭症と診断されることもあります。白人のCl正常値は76~8 0.9%とされています。[出典2]
また、Clは人種によって異なることが知られています。日本人のこどもで計測した正常値は79.2~93.8%とされていて、白人にとっては日本人の正常値は短頭、逆に日本人にとっては白人の正常値は長頭ということになります。[出典3.4]
更に、時代や国内の地域によっても変化があります。文化的に仰向けに乳児を寝かせる地域におけるClはうつぶせ寝の地域よりも大きいことが知られています。うつ伏せ寝文化圏でのCl正常値は76~81%に対して、日本や韓国など仰向け寝文化圏の学童におけるClは85~91%です。[出典5] 最近の米国の報告によると、現行のCl正常値(標準値)は将来変化する可能性があります。
乳児の短頭の原因で最も多いのが、仰向け寝です。
向きぐせが無い乳児が、上を向いて長時間寝ると後頭部の中央に平坦な部分ができます。両側性頭位性斜頭、central deformational plagiocephalyという言い方をすることもあります。
リスク因子としては、未熟児、第2子、新生児で受動的に頭を動かさない、月齢4か月で能動的に頭を動かさない、低緊張などがあります。
オーストラリアで2004年の調査では200人の生後4か月の乳児のうちCl>93%(乳児の平均値は81.6%)の短頭とされた子が10%いました。[出典6] 日本人における頻度は不明です。
短頭の病的な原因のひとつに、頭蓋縫合早期癒合症(両側冠状縫合早期癒合症、両側ラムダ縫合早期癒合症など)があります。比較的稀で、頭位性短頭症には認めない外観の特徴があります。たとえば(上眼嵩縁が眼球の前表面より後方にあるほど)眼が非常に突出して見える、重度の前額部の後退と、前方塔状頭です。
後頭骨の形成不全を特徴とするというキアリ奇形は、CTやMRIで診断します。その他、ダウン症でも短頭の特徴を持つことが知られています。
斜頭症の特徴を理解するのに Argenta (アルヘンタ)の分類が有用で[出典1](図1)、医師の診断において広く使われています。
type I (VIA)
後頭部正中の平坦化(図1-2)
type II (VIB)
頭蓋骨の後方が側方拡大している:上からみて台形や三角形の形をしている(図3-4)
typeⅢ(VIC)
脳の減圧のために二次的に全長後頭部の増高、こめかみや側頭部拡大、前頭部のスロープ状の平坦化を生じている、横から見て三角形の形をしている。(図5-6)
cephalic index(頭長幅指数または頭指数ともいいます。以下「Cl」といいます。)を用います。
79%以下
長頭
80~94%
標準形態(日本人)
95~101%
短頭
101%以上
超短頭[出典3]
Clは人種によって標準値が異なることが知られているため、数値だけでの評価には慎重である必要があります。日本人におけるCl値による短頭の重症度(軽度、中等度、重度)は十分なサンプル数の調査がありません。
お子さんの特徴や計測の重症度がどれにあたるのか、きちんと評価するのは保護者のかたにとっては難しいかもしれません。クリニックでは、実際に触れて、計測してできますのでお気軽に受診してください。
頭蓋縫合早期癒合症が原因の場合の短頭は、進行につれて頭囲の成長が止まることがあります。手術が必要ですので、できるだけ早く診断がつくことが大切です。
気になったらすぐに小児脳神経外科または小児形成外科を受診してください。赤ちゃんのあたまのかたちクリニックでは、このようなお子さんの早期診断や手術可能な施設との連携も行っています。
頭位性短頭症の自然経過は不明です。首のすわりや寝返りが早い乳児では後頭部の成長により平坦さが改善することがありますが、日本人では短頭の大人をよく見かけるので、自然改善の程度はわずかだと考えられます。
月齢6か月で寝返りができているのに短頭の特徴がある場合は、それ以降の頭囲成長スピードの鈍化を考慮にいれると自然改善は難しいことも多いと考えられます。
type II (VIB)やtype Ill (VIC)に診られるような、二次的に生じた特徴である側頭部の拡大(いわゆる”おはち”) や、頭頂部の増高は自然改善することはありません。小泉門が平坦になってしまった場合、大人になっても残っている場合があるようです。
ただし毛量が増え髪質が太くなり地肌が見えなくなることや、頭囲が大きくなることで平坦さが薄まったように感じ、気にならなくなることも多いです。
整容的な問題が主なものです。「髪型が制限される」、女児では「ポニーテールなどの髪型が決まらない」などがよく聞かれます。「スポーツや自転車用の保護帽子がフィットせずに脱げてしまう」「幅広の年長さん用の帽子しかかぶれない」、「ハチマキで駆けっこすると取れてしまう」、受診される保護者の方にはひそかにコンプレックスを持っているとうちあける方も多いです。
クラニアルテクノロジ一社が公表した研究では、短頭(症)による筋肉の不均衡(いわゆる前後バランス不均衡)を指摘しています。[出典9]
それによると、
“後頭部が平らになると、後頭部の重心が前方および土方に移動する。それが重症の場合、乳児の姿勢制御および姿勢の調整に影響を与える可能性がある。重心が移動すると、前頚部の筋肉が縮まり後頚部の筋が伸びて、扁筋/伸筋群のバランスが崩れる。このアンバランスは姿勢の安定性を偲下させ、収縮した前頚筋は引き伸ばされた、伸筋グループより速く反応する可能性がある。
この姿勢の不安定さは、運動の効率に影響を及ぼす。未発達の乳児の姿勢は、バランスを保っために、あごを曲げて体幹を丸めるか、首を過度に伸ばして肩を上ける傾向がある。これらの姿勢は、乳児の動きの変動を少なくし、そして環境との相互作用である乳児の運動を制限する。 “
[出典10-14]]
と述べています。
姿勢への影響はひろく受容された理論ではないものの、短頭症の乳児には低緊張、運動発達の遅れをがみられる頻度が高いようです。病的であることは少ないため乳児検診を受けていれば過剰な心配は不要ですが、月齢5か月になっても首がすわらない、その他気になることがあれば相談、サポートを受けることが大切です。
頭の平坦部への長時間の荷重を防ぐことにつきます。[出典15]
後頭部を丸くしたいからといって、うつ伏せ寝は好ましくありません。1歳になるまではあおむけに寝かせることが推奨されています。
乳幼児突然死症候群啓発(厚生労働省)
ドーナツ状の枕を使用し続けたお子さんの中には、後頭部の上のほうがはまり込み、後頭部の下の方が扁平になってしまったと思われる変形をしていたり、枕のなかで収まって頭を長時間動かさなくなっている場合があります。もし寝具を用いて予防する場合は、保護者は赤ちゃんから目を離さないでください。またその時々のお子さんの頭のサイズや姿勢に適しているかどうか常に確認してください。ボストンこども病院の医師は、寝具のサイズを毎週、再検討することを薦めています。
枕やその他の寝具は、首がすわったあとや、寝返りをするお子さんでは危険か、あるいは赤ちゃんが動いて位置が変わってしまい無意味なため、推奨されていません。
長時間のバウンサー、ベビーカー、カーシートなどの狭い場所に固定することは避けましょう。使用する場合は1時間に一度は休憩をとって、マッサージなどで体の筋肉や関節の緊張を取ってください。
出生後早期から、興味のあるオモチャや声掛け、うつ伏せ姿勢(タミータイム)などで、運動発達を促します。月齢と発達段階によって効果のある方法が変わります。
クリニックでは早期進行予防と軽症変形の場合の体操治療を行っています。
程度が軽い場合(Argenta type I (VIA))は成長とともに気にならなくなることも多いです。概ね月齢4か月以下の赤ちゃんや軽症例では、家庭で可能な理学的療法が推奨されます。
月齢4、5、6か月児で比較的重症な場合は「ヘルメット治療」が推奨されます[出典8]。
cephalic index(頭長幅指数または頭指数ともいいます。以下「Cl」といいます。)は重症度の目安になります。
Cl>100%の場合には日本人では超重度になります。頭幅のほうが頭長(前後の長さ)よりも大きい状態です。
Cl=100%の場合は頭幅と頭長が同じ長さ、すなわち頭頂部からみると正円(まんまる)に見えるため、短頭に寛容な日本社会では、それが重症短頭に分類されるという評価はしっくりこないかもしれません。
米国で2000年に発行された成書では白人の短頭の定義はCI>81%でした。[出典2]
76.0~80.9%
正常値
81.0~85.4%
短頭
85.5%以上
超重度短頭
しかし、2018年に米国のヘルメット供給会社によって発表された論文では
88%以下
正常値
89~90%
短頭
90~93%
短頭(中等度)
93%以上
短頭(重度)
というように、正常値が日本人寄りに変わってきています。[出典9]
93%というのは日本人では正常値ですので、海外の数値をそのまま適用するのは慎重であるべきでしょう。また、このように細かい数字刻みで重症度が決められている米国は短頭に不寛容な文化なのかもしれないということが伺えます。
もし二次的にArgenta type II (VIB)(おハチが張っている:結果として頭が三角おむすび型に見える)、type Ill{VIC)(頭頂部の増高、前頭部のスロープ状扁平)の変形がある場合は、Cl値が94から100%であってもヘルメット治療を推奨します。これらの特徴は自然改善は期待できないからです。 (保護者がその特徴を許容できる場合は治療の必要はありません)治療する場合には下記に記すようにヘルメットの種類と設計によっては、改善が得られないことがあるので慎重に選択してください。
海外では長らく、短頭症にヘルメット治療の効果は期待できない、と考えられてきました。[出典15-17]
治療効果を公表した論文はたったの3本に限られています。Teichgraeber (2004)は4.5か月間の装着でC I : 2.8%改善、Graham (2005)は3.7か月装着してC I : 4.2%改善でした。
ミシガン大学式頭蓋形状矯正ヘルメットは、治療期間中にヘルメットの長さを前後に延長が可能であるため、後頭部の成長を促すのに合理的です。しかしこの製品の開発者であるAmanathでも約5か月間の装着でClは2.6 %の改善であったとの報告にとどまっています。[出典18]
ところが我々のプロモメットによる治療経験では、平均27週(4から1 0か月)で10.1±3.3%の改善(治療前Cl : 100.7%から90.6%)を認めました(論文準備中)。何故そのような差がでたのかは不明です。今後の治療手技比較研究に期待したいと思います。
月齢4か月男児 Cl:108%、CA (*):15mm, Argenta type 111 (VIC)+Iの最重症短斜頭。
治療前と治療後の3Dスキャン画像
治療後(1歳0か月)CI:93%、CA (*) : 9mm, Argenta type I (VIA)
側面から見て後頭部と前頭部の丸みが増え、頭頂部の斜め後方増高も丸くなりました。変形が強かったため長い治療期間が必要でした。
(掲載許可を得ています)
* CA : Cranial Asymmetry(正中から左右3 0度をなす2本の線分長差)
ヘルメット治療によっても変化を見込みにくい形の特徴があることもわかってきました。例えば、二次的に広がってしまった頭幅を抑えることはできません。ヘルメット治療は圧迫を加えて頭蓋骨を強制的 に変形させて矯正する治療ではありません。いわゆる”おハチ”を目立たなくするためには、それを上回るほど後頭部が発育するための期間と頭囲成長が必要であり、治療が終了する1歳の時点では残っていることがあり得ます。
二次的な頭頂部の増高、前頭部のスロープ状の平坦さの改善は、開始月齢と、ヘルメット設計形状の影響を受けます。その改善を期待する場合には製品の選択を考慮する必要があります。治療開始前に、治療の期待できる効果と限界について、理解して開始することが大切です。
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