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頭の形外来
Crania Deformity Blog

タミータイムは万能ではありません

こんにちは。赤ちゃんのあたまのかたちクリニック院長の高松です。

前回は、2011年に国立成育医療研究センターで頭の形外来を始めた頃のお話と、日本でタミータイムという言葉が広まるまでに長い時間がかかったことについて書きました。

前回ご紹介したタミータイム(起きている時間に保護者の見守りのもとうつ伏せで過ごす時間)について、今回は科学的根拠と限界をお話しします。

最近ではSNSなどで、

「タミータイムをすれば頭の形が良くなる」という情報を見かけることがあります。

一方で、「タミータイムなんて意味がない」という極端な意見を見かけることもあります。

しかし実際の医療は、そのどちらでもありません。

私自身、2011年から頭の形外来に携わる中で、多くのお子さんとご家族を診てきました。

その経験から言えるのは、タミータイムには確かに意味がある。

しかし、タミータイムだけで全てが解決するわけではない。

ということです。

今回は、現在分かっている科学的根拠と、実際の診療現場で感じている効果や限界について整理してみたいと思います。

タミータイムには科学的根拠があります

まず大切なのは、タミータイムは単なる流行ではないということです。

海外では1970年代からの長年にわたり研究が行われており、乳児の健康や発達への影響が検討されています。1)

2020年に発表された系統的レビューでは、タミータイムは乳児の粗大運動発達と関連し、頭蓋変形の予防にも役立つ可能性が示されています2)。

また、「Back to Sleep, Tummy to Play」という考え方を整理した総説では、仰向け寝によって守られる赤ちゃんの命と、タミータイムによる運動発達や頭の形への配慮を両立させる重要性がまとめられています3)。

つまり、タミータイムには一定の科学的根拠があります。

少なくとも、「全く意味がない」というものではありません。

発達は「知能」のことだけではありません

発達という言葉を聞くと、

「言葉の発達」

「知能の発達」

を思い浮かべる方も少なくありません。

しかし新生児・乳児期の発達は、まず運動発達から始まります。

  • 首がすわる。
  • 寝返りをする。
  • うつ伏せで体を支える。
  • ずりばいをする。
  • はいはいをする。
  • つかまり立ちをする。

こうした運動の積み重ねが、その後の発達の土台になります。

タミータイムは、その土台作りを助ける取り組みの一つです。

私たち自身も検証してきました

私自身、国立成育医療研究センターで頭の形外来を担当する中で、タミータイムを含む積極的体位変換療法と名付けて理学的療法プログラムを長年行ってきました。

起きている時間のうつ伏せ遊び、抱っこの工夫、向き癖への対応、授乳姿勢の工夫、

生活環境の見直し。

こうした保存的な対応は現在も重要だと考えています。

一方で、そのような取り組みを行っても十分な改善が得られないお子さんがいることも経験してきました。

そこで私たちは、日本人乳児の変形性斜頭症に対するヘルメット治療の有効性と安全性について検討を検証しました。その結果、適切な症例ではヘルメット治療が有効な選択肢になり得ることを報告しました4)。

この研究は、

「タミータイムには意味がない」ということを示したものではありません。

むしろ、タミータイムによって改善するお子さんもいる(定頸前の86人中約20%)。

しかし、それだけでは十分な改善が得られないお子さんもいる。

という、私たちが日常診療で経験してきた現実を裏付けるものでもありました。

現実の子育ては教科書通りにはいきません

診察室で説明した内容を、そのままご家庭で実践できるとは限りません。

うつ伏せ遊びが好きなお子さんもいれば、強く嫌がるお子さんもいます。

向き癖が比較的改善しやすいお子さんもいれば、なかなか変化しないお子さんもいます。

また、ご家族の生活環境もそれぞれ異なります。

そのため、

「タミータイムをしたから大丈夫」

とも、

「タミータイムをしても意味がない」

とも言えません。

重要なのは、そのお子さんの状況を評価しながら経過をみることです。

当院が大切にしていること

当院では、

  • まず家庭でできることをお伝えする。
  • その経過を評価する。
  • 必要であれば理学療法士による発達サポートを行う。
  • さらに必要であれば治療の選択肢を検討する。

という流れを大切にしています。

理学療法士による発達サポートは任意ですが、

「タミータイムを教わったけれど嫌がってしまう」

「抱っこの工夫がうまくいかない」

「寝返りはできるが体の使い方が気になる」

といったご相談に対して、より個別的なアドバイスを行っています。

私たちが目指しているのは、

「とりあえずヘルメット」

でも、

「とにかく様子見」

でもありません。

そのお子さんにとって何が必要なのかを、ご家族と一緒に考えることです。

日本ではまだ十分に普及していない診療モデルです

頭の形の診療では、本来、

頭蓋縫合早期癒合症など見逃してはいけない病気を診断して必要なら手術すること

タミータイムや体位変換などの保存的な対応を行うこと

発達や姿勢の評価を行うこと

必要な場合に装具療法(ヘルメット治療)を検討すること

が一連の流れとして考えられます。

実際には、

相談を受ける施設、診断を行う施設、手術を行う施設、発達支援を行う施設、ヘルメット治療を行う施設が分かれていることも少なくありません。私の知る限り、日本ではこれらを一体的に実施できる体制はまだ多くありません。

次回予告

現在では、

「寝る時は仰向け」

が世界共通の考え方になっています。

しかし、そこに至るまでには長い歴史がありました。

そして実は、タミータイムは頭の形のため“だけのため”に生まれたものではありません。

次回は、

「仰向け寝が赤ちゃんを救い、タミータイムがその副作用を補う」

というテーマでお話ししたいと思います。

参考文献

3) Wittmeier KDM, Mulder KA. Back to Sleep, Tummy to Play: A Review of the Literature on Tummy Time in Infants. Paediatr Child Health. 2017;22(3):159-163.

4) Takamatsu A, Takahashi M, Shirakawa M, et al. Evaluation of the Molding Helmet Therapy for Japanese Infants with Deformational Plagiocephaly. JMA J. 2021;4(1):50-60.

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