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頭の形外来
Crania Deformity Blog

タミータイムがあおむけ寝の副作用を補う

仰向け寝が赤ちゃんを救い、タミータイムがその副作用を補う

こんにちは。赤ちゃんのあたまのかたちクリニック院長の高松です。

前回は、タミータイムには科学的根拠がある一方で、万能ではないことについてお話ししました。

今回は、なぜタミータイムが生まれたのか

という歴史についてお話ししたいと思います。

実はタミータイムは、頭の形を良くするためだけに考えられたものではありません。

その背景には、赤ちゃんの命を守るための長い歴史があります。

今では当たり前になった「仰向け寝」

現在、日本でも海外でも、

「赤ちゃんは仰向けに寝かせましょう」ということが広く推奨されています

育児を経験された方の多くは、一度は耳にしたことがあると思います。

しかし、これは昔から当たり前だったわけではありません。

私が医学生だった40年前には、

「うつ伏せ寝の方がよく眠る」

「吐いたミルクを誤嚥しにくい」

と小児科の授業で教わりました。実際に、うつ伏せ寝が推奨されていた時代もあったのです。

日本では、座布団の上にあおむけ寝といった睡眠の赤ちゃんも多かった時代です。うつ伏せ寝は欧米の“進んだ子育て”“格好良い姿勢づくり”を取り入れる意識高い系育児だと流行したのです。

SIDS研究が世界を変えた

その後、多くの研究が行われました。

すると、うつ伏せ寝の赤ちゃんでは乳幼児突然死症候群(SIDS)が多いことが分かってきました。

1990年代になると欧米各国で、Back to Sleep Campaign

が始まります。

「赤ちゃんは仰向けに寝かせましょう」という運動です。

その結果、乳幼児突然死症候群による死亡は大きく減少しました。

これは小児医療の歴史の中でも非常に大きな成果の一つです。

現在でも、

寝る時は仰向け

柔らかい寝具は置かない(ドーナツ枕もだめ)

周囲に物を置かない

という考え方は、赤ちゃんの安全な睡眠環境の基本となっています。

一方で新しい課題も生まれました

医療では、一つの問題が解決すると新しい課題が見えてくることがあります。

仰向け寝の普及によって命が守られるようになった一方で、

後頭部への圧力が長時間続くことで、

  • 斜頭症
  • 短頭症
  • 長頭症

といった頭蓋変形が目立つようになりました。

さらに、頭の形だけでなく、乳児期の運動発達も注目されるようになりました。

起きている時間にも仰向けで過ごすことが多い赤ちゃんは、首を持ち上げたり、腕で体を支えたりする経験が不足しやすくなります。

その結果、頭蓋変形の増加とともに、初期の運動発達への影響も課題として認識されるようになりました。

こうした背景から生まれたのが、後に「タミータイム」と呼ばれる考え方です。

そこで生まれたのがタミータイムです

タミータイムは、仰向け寝をやめるための方法ではありません。

むしろ、 仰向け寝を続けながら、その影響を補うための方法

として提唱されました。

つまり、

寝る時は仰向け。起きている時はうつ伏せ遊び。

この二つを組み合わせる考え方です。

海外では、

Back to Sleep, Tummy to Play

という言葉で広く知られるようになりました。

仰向け寝による安全性と、運動発達や頭の形への配慮を両立させるための考え方だったのです。

日本では広まるまでに時間がかかりました

前々回も少し触れましたが、日本ではタミータイムの認知が広がるまでに長い時間がかかりました。

私が国立成育医療研究センターで頭の形外来を始めた2011年頃、タミータイムという言葉を知っている保護者はほとんどいませんでした。

当時は、

「積極的体位変換療法」という言葉で説明していました。

それから約15年。

最近になってようやく、産院、自治体、育児書、SNSなどで紹介されるようになり、

保護者の方から「タミータイムをしています」という言葉を聞く機会が増えてきました。

私自身、この変化をとても興味深く感じています。

頭の形だけでなく発達のためにも

タミータイムの目的は、頭の形だけではありません。

首を持ち上げる。

肩を支える。

腕で体を支える。

体幹を使う。

こうした経験は、その後の運動発達の土台になります。

赤ちゃんは生まれた時から歩けるわけではありません。

首すわり。

寝返り。

ずりばい。

はいはい。

つかまり立ち。

こうした運動発達を少しずつ積み重ねながら成長していきます。その経験のさなかに、自分の感覚体験と、保護者が自然にかける言葉、たとえば「握る、なめる、お手手、頭、お顔、重い、こっち、あっち」などの音とを一体化させて憶えていきます。

タミータイムは、その過程を支える取り組みの一つでもあります。

当院が力を入れていること

当院では、ヘルメット治療だけではなく、頭の変形予防実践プログラムにも力を入れています。

頭の形の診察では、向き癖、首の動き、姿勢、寝返り前後の体の使い方、発達の様子

などを確認しています。

初回診察では評価と状況の整理が中心になりますが、

より具体的なサポートを希望されるご家族には、小児分野を担当する理学療法士による発達サポートもご案内しています。

私たちが目指しているのは、頭の形だけを見ることではありません。

赤ちゃん一人ひとりの成長を見ながら、そのご家庭に合った方法を一緒に考えることです。

最後に

タミータイムは、頭の形を良くするためだけに生まれたものではありません。

乳幼児突然死症候群から赤ちゃんを守るために普及した仰向け寝と、その影響を補いながら発達を支えるための取り組み。その両方を両立させるために生まれた考え方です。

寝る時は仰向け。

起きている時はタミータイム。

この二つは対立するものではありません。

赤ちゃんの安全と健やかな成長を支えるための、同じ方向を向いた取り組みなのです。

参考文献

1)Wittmeier KDM, Mulder KA. Back to Sleep, Tummy to Play: A Review of the Literature on Tummy Time in Infants. Paediatr Child Health. 2017;22(3):159-163.

2)Moon RY, Task Force on Sudden Infant Death Syndrome. SIDS and Other Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2016 Recommendations for a Safe Infant Sleeping Environment. Pediatrics. 2016;138(5):e20162938.

3)Turk AE, McCarthy JG, Thorne CHM, Wisoff JH. The “Back to Sleep Campaign” and Deformational Plagiocephaly. Pediatrics. 1996;97:786-787.

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